盛岡の東横インに一泊した次の朝、すぐに仙岩峠に向かおうとはしないで、県立美術館をはじめて訪問する。
企画展の「アートフェスタいわて2025」は、職業作家であるかどうかを問わずに県下のひとの一年間の芸術創作を総括して、例年の恒例行事のようにしているようす。彫刻、書道、工芸、版画、日本画、水墨画、洋画、のようにカテゴリは定められながら、あらゆるおおきさのことなる作品がのびのびと並べられていて、やたらに刺激的だった。
とりわけ喚起力の強かったものはこう。
- 一年をとおして午前五時五十五分に南東の空を映し続けたインスタント写真を配列して変化の連続性と非連続性をみせる、加村なつえさんの現代作品
- 高村光太郎の「怒」を題に「怒とは存在の調革」と含む近代詩を取りあげた、丸若敬葉さんの書道作品
- もの派を再考するにあたって「盛岡冷麺物語」「八幡平のハロー校」「オッベルと象」「ベルのハンバーグ」など局在的な話題への執着で語りなおす、村井康文さんの床置き漫画作品
- 海の底からザトウクジラがせまってくる動きを大胆な構図のハイレゾ写真に映した、髙橋怜子さんの写真作品
ほか、大地のなかにある人間の生滅を共有したおおくの作品はまとめて情感ゆたかだった。
冬の森、夏の沢、みわたすかぎりの田園、春のおとずれ、わらぶき屋根の廃墟、けむりはく工場、はげしい流れを吐きだすダム、こいのぼりの向こうを横切る蒸気機関車、手をふる家族の背中。