土曜日の午後、東北ではここでしかみられない映画をみるために仙台まで出かける。
はじめ車でいくつもりでいたのを電車にかえた。四時台に上映があって、三時に出たら余裕もって間に合うというときに、朝のうちに運動を済ませてお昼を食べたらほかにやることがなくなってしまった。電車でいったほうが暇つぶしに小回りをきかせられる。いそげば一時の電車に乗れるから、ことし最後になりそうな大寒波で雪はないけど突風が吹くなか自転車で駅までダッシュして乗った。
仙台のアーケードを散歩。昼をレトルトカレーで適当に済ませたぶん、運動後のタンパク質をとれていないのが急に気になって、取り憑かれたみたいにコンビニで紙パックの運動飲料を手にいれて飲んだ。ついでにグミも買ってはみながらあるく。
ジャズ喫茶カウントにはいって音楽をきく。カーティス・フラーの六重奏。デクスター・ゴードンのライブ・イン・パリ。マイルス・デイビスの六重奏。これは前にきたときもかかっていて、たぶんマスターのお好みなんだとおもう。ぼくのほかにお客さんはなし。
この前にきたときは賑わっていてカウンター席にかけた。そのときには気づかなかったことで、各テーブルにはぼくの世代にはヤクザ映画の事務所においてあるのしかみたことのないような飾り彫つきの重厚なガラスの灰皿がおいてある。おもえばタバコ臭い店だし、というかマスターがうしろでふつうに吸ってて、煙がただよってくる。ぼくも一本だけ吸っちゃおうかとおもって、ポケットから箱をだしてしばらくうかがって、火はつけたものの店のなかで煙をはいて怒られないかそわそわして、ぜんぜん味のしない一服になった。もういかなきゃというときにバド・パウエルのライブ盤がかかりはじめて、後ろ髪ひかれながら出る。
商工会議所の前からバスに乗って北四番丁の映画館までいく。フォーラム仙台、はじめていく映画館になる。寒風をあびてすぐ来るはずのバスがなかなか来ないのを待っていたらさっきカウントでもトイレを借りたのにまたすぐいきたくなって、映画館についたらすぐさまトイレに駆け込んだ。きれいなトイレだ。きれいな映画館だ。
通路の壁に上映作品のチラシとインタビュー記事とか新聞記事のプリントが張ってあるのをじっくりみたら、あれもこれもみなくちゃというおもいに自然にさせられるのがうれしい。おなじ仕掛けをもっていた高田馬場の早稲田松竹をなつかしくおもいだしながら、こっちの映画館のほうが通路がひろくて、立ち止まって熟読しても邪魔にならないか心配しなくていいのもうれしい。
駐車場は映画館の背後にあって、一方通行の路地をまちがわずにはいってはじめて駐車できるらしい。それはウェブサイトでおぼえた知識だった。いまみれば店の前に駐輪場があってバイクも二台とまっていて、なるほどバイクで来ればここに駐められるというのもおぼえた。
四時台に『ストレイト・ストーリー』をみて、そのまま六時台に『ダーク・スター』をみた。幕間は菓子パンを買いにコンビニまでいく時間もなかったけど、一本目の映画で禁酒して長いアルヴィンがウィスコンシンに着いてひさしぶりにビールを一本だけのむのを自分に許したのがやたらうまそうにみえて、ひとつだけぼくも飲んじゃおうといって、映画館のちいさいキオスクでハイネケンとホットドッグを買ってシアターにはいった。
映画が終わって帰り道を考えながら歩いたら、うしろからさっきの『ダーク・スター』のくだらない展開のことをうれしそうに話しあう声が近づいてきた。高校生か大学生かわからないけどみずみずしい体験をしているな、とおもって追い越されるのに任せていたら、楽しそうに語らっていたのはそれより上のおじさんふたりだったのがみえて、ああこのひとたちはなんていい友達をもっているんだろうとうらやましくみえた。
バスで仙台駅まで戻るように乗り換え案内がみえたけど、バスを待つにはあまりに寒くて、無計画に地下鉄の駅におりた。それで仙台駅までは戻れそうだった。仙台駅についたら、そのままJRのあおば通駅に乗り継ぎができて、そこが仙石線の始発駅になっているから、そのまま待ちもしないで乗って座れた。乗り換え案内が見落とした最適ルートをそうと知らずに見つけたみたいだった。
鈍行で帰った。電車のヒーターが動いていなくて、寒さで足がふるえた。あんまり寒いので自転車はまたあしたとりにくることにして、ポケットに手をいれたまま家まで歩いた。