早起きしたらゆうべからの小雨がまだ降っていた。掃除と洗濯をひととおり終えるとお日さまがみえるようになった。晴れてすごしやすそうな週末はバイクに乗ります。
気仙沼まで国道45号で二時間弱、のんびり走っていきます。ひらけたあたりの道路はすっかりかわいていて、山の陰になった道はひんやりしてまだ湿っていた。石巻の市外に出たらほかに車はみえなかった。
反対車線でたぬきが死骸になって横たわっていた。カラスが一羽そのかたわらにたたずんでこっちをみた。ギョッとしてとおりすぎざまにサイドミラーをのぞけば煽り屋のライトバンに張り付かれているのに気づいて、すぐさま先を譲って勝手に消えていただくことに、です。まだ濡れている道で法定速度の倍は出しちゃっているようにみえて、こわかったですね。
さんさん南三陸でトイレ休憩をして、さらに国道の先にすすめばここからははじめてのコースです。気仙沼まであと何キロ、と書いてあるのがやさしい道路標示にだけたよって、ほどよい蛇行路にそってまっすぐいくと、小一時間で市街にはいります。バイパスが新繁華街のようになって渋滞しているのに捕まります。
港に向かって、お目当ては市場そばの「鶴亀食堂」の定食です。メカジキのカマ照焼きとカツオのお刺身をいただきます。照焼きはプルプルのコラーゲン質に独特の歯ごたえがあって食べ進めるのに単調さがないのがおもしろく、カツオはとろりと粘ってあとは溶けるだけの舌触りがおどろかせてよこします。
食後の休憩のあと気仙沼大島まで足をのばしてみます。島南端に岬があって龍舞崎と呼ばれているのを地図でよんだのをおぼえていたのでした。港から湾にそっていくうち大島という表示があらわれてくるのにしたがっていきます。離島まで海をまたいで巨大道路橋でわたらせます。
龍舞崎は駐車場にとめたあと松並木のトンネルに沿って遊歩道がととのえてあって、坂道をのぼりくだりあるいていくとすぐ突端までいけます。はるかしたのほうにみえる海面はそのすぐしたにかくれた浅い岩場が大波小波をくだいて真っ白に渦巻いています。大風が吹いて目をあけるのも苦労するほどです。海面に突き出した岩が荒波を捕まえて、それを突風がさらに押し返しています。激しい景色です。ドラゴンがあばれているみたいな景色といえばたしかにそうみえたものでした。
道路情報の電光掲示板に不穏なニュースがみえています。暴風警報発令中。このさき横風に注意。大島から本土にふたたび大橋をわたるのに、突風はたしかに右から左から吹いて、法定速度にあわせて走ってもなお不安な難路でした。
それからさきの長い帰り道、林のなかならまだしも風は一方向にだけ吹くが、ひらけた平野に出れば突風は上下左右から激しく打ち付けてよこします。車両をあおる横風に耐えるほか、頭蓋骨を打つ風が首を全方向に揺らそうとしてよこすのが試練になります。視線が安定しなければ身体も車両も安定させるのがむずかしくなるはずとおもって、肩と背中をかためて首を支えるようにします。
細かい停車をおおめにはさみながら、南三陸、登米、石巻と帰ってきます。最後に給油をしておわりにしようとすれば、ヘルメットをはずして緊張を解除したとたんにそれまで浴び続けたぶんの花粉のつけがまわって、くしゃみが五度も十度もつづいて止まらないのでした。