三陸に引越してきて最初の3月11日だ。防災無線が鳴って目が覚めた。慰霊式典があるといった。黙祷のためのサイレンを鳴らすといった。
野球大会の予選リーグの中継をみながらいつもみたいにはたらいた。カナダがプエルトリコに競り勝った。イタリアがアメリカに追いあげられながら逃げ切った。作り置きのミートソースをスパゲティにからめて食べた。
サイレンの鳴る時間に外に出た。いい天気でしずかだった。玄関先に腰掛けた。三十秒くらい鳴るのを目をつむってきいた。いろんなものの音がよくきこえた。風が葉っぱをひきずった。ゆっくり車がよこぎった。エアコン室外機がまわっていた。サイレンの残響がゆっくり消えていきながらいつまでも残っているみたいだった。
ちょうど慰霊式場にお花をとりにいくところの花屋さんとしんみりはなした。隣の先輩はきょうは気持ちの切り替えがつかなくてなかなかつらいけどそれも生かされていることの意味なんですねとつとめて明るくおっしゃっていた。
冷凍の春巻きをフライパンで焼いて焦がした。焦げてもうまかった。七時のニュースはいつもより長く大震災の特集をした。あたらしく住んでおぼえはじめた街の知っている景色をいくつもみた。アントニオ・カルロス・ジョビンの「三月の水」をしんみりとなんどもきいた。