一週間でふたつめのプロ野球観戦にいく。この日は県民なら無料でもらえる招待券をCさんが抽選にあててくれたのに甘えて連れて行ってもらった。

金曜日の午後まるごと、仕事はおやすみにする。トレーニングを済ませてから早めの電車で仙台までいく。

おたがいお昼はまだで、ファミレスあたりで開場まで時間つぶしましょうといって仙台駅東口から歩いていったら、白木屋がランチタイムといっていろんな定食を安く出しているのがみえた。味噌カツ定食をたのんで、ごはんと味噌汁がおかわり自由になっているのをもりもり食べて、なお時間はあるからハッピーアワーで安くなっているビールもいただいているうち、もう開場の時間です。

正面ゲートのところでチケットの引換をしてもらったのをみると、ライトスタンド席と書いてあるのは順当にいえば相手チームの応援席のはず。いくら招待券といっても県民を敵地にまわすのはいかがなものか…といいながら向かえば、ロッテの応援席はそれよりも高いところにあって、割り当てられた席のまわりはふつうに地元の老若男女が埋めていた。お父さんといっしょにきている未就学のこどもが、岩隈投手のふるいちいさなキャップを頭にのせているのがかわいらしくみえた。

イーグルスは藤井投手、マリーンズは種市投手がそれぞれ投げて、まだ十分もたたないうちに二回がはじまるくらいのテンポでどんどんアウトが増えていった。

暗くなりかけの、でも暗くなりきってはいない空はボールとおなじ色をしていて、打ち上がった打球はたちまちみえなくなって、いちどは外野手さえ球を見失ってラッキーヒットを許してもいた。それにも関わらず、絶好の機会といえばその幸運ひとつくらいのもので、守り合いの膠着した試合となった。

こういう試合はホームランひとつで決まったりしますからね、といいながらあたらしいグローブをはめてまだ固い革をほぐしながら待っても、ホームランはなかった。攻めは四球と送りバントでせめて一点を取ろうとして、守りがそれを退けるというのをいくつもみた。

日が暮れるまえから肌寒かったのに風も吹いて球場は冷えていた。風がなければまだ耐えようもあるけど、ふわっと吹いただけで震えあがらせるような寒さの夜だった。試合も淡白なものだからしばしば立っては球場の外周を歩いてしのいだ。

熱い缶コーヒーがほしいのに、場内の自販機はペットボトルの冷たい飲み物しかおいていなかった。Cさんいわく、酔っ払いに空き缶をもたせるとすぐグラウンドに投げ込んじゃいますから…とのことだった。とてもビールをガブガブ飲ませようという気候じゃなかったから、売り子さんがたもやがてあったかいココアのポットを抱えて営業なさっていた。

終盤はロッテが毎回のようにチャンスを作って、楽天のリリーフが火消しをした。延長戦にはいったら立場は逆になって、楽天がチャンスを作ってはロッテの火消しがうまかった。

夜が更ければいよいよ寒くて、スタンドの外で熱燗をたのんで、テレビ中継を映している脇に腰をおちつけていた。あったかいお酒はうまかった。せっかく球場にいてもこうやって目をはなしているときに限ってあっけなく試合終了しそうすよね、といいながらみていて、やっぱり決まらなかった。

十一回の裏の楽天の攻撃で、この回で決まらなかったら電車もあるし駅に向かっちゃいましょうかといいながら外野席に戻ったら、ちょど辰己選手がシングルヒットで塁に出たところだった。チャンス拡大の盗塁を試みたらキャッチャーの悪送球が内野手の頭を越して、ランナー三塁になった。反対側のスタンドの楽天応援団は「お前が決めろ村林」と大合唱をして、それってすごいプレッシャーですよねといっていたら、その村林選手がサヨナラヒットをほんとうに決めた!

こうして初回からずっと無得点の、よくいえば緊張感ある、わるくいえば決め手を欠いたゲームは最後には楽天が勝ちきって、満足げに帰るひとの波にのってぼくたちも帰った。

金曜夜の仙石線は、野球をみて帰るひとの混雑が仙台でぱーっと飲んで帰るひとの混雑に合流して、ぎゅうぎゅうの満員電車だった。ぎゅうぎゅうとはいっても多賀城より手前でずいぶん降りて、そこからあたらしく乗ってくるひともおおくないので、楽になるのもはやかった。

最寄り駅についたのが23時すぎで、お昼が遅かったとはいってもさすがに腹へりましたねといって、駅前にある深夜営業のお店であったかいそばを食べた。安いおいなりもつけてもらったら、みためにはそうともわからなかったけどあたたかいできたてのおいなりだったことにかじりついてはじめて気がついて、これはいままで食べたなかでも最良のおいなりじゃないかとおどろいた。