四月から毎週水曜日の夜練をしてきたのはこの日曜日の対抗戦のためで、朝から運動公園に集まって三試合にフル出場させてもらった。

いつも練習でノックを打ってくれたMさんが打順とポジションを決めてくれるのは当日の発表ときいていた。ゴロは捕れそうだし送球の負担も軽いからといって二塁手をやるつもりでいて、当日の朝もはじめそうときいていたけど、一試合目の直前になって一塁手をやることになった。

初回の裏の守備で、悪送球を止めるのに飛び込んでころんだ。こぼしたボールを拾いながら走者を刺すのにボールごと塁に飛び込んでころんだ。その二度目のダイブで肘を擦りむいた。いつもの練習場と違って粗めの砂がまざったグラウンドで、半袖のシャツひとつであんまり飛び込むものじゃなかった。血がすこしにじんでひりひり痛んだ。

守備が終わってからベンチで絆創膏ありますかときいたら、応援にきてくれていた女性がたに、まず水で流してきてください! と指示されて、グラウンドの脇の水道で土を流したらいっそうヒリヒリした。土が落ちきらないとおもったのは、長い守備のあいだにもう血が固まって薄いかさぶたになっているのだった。流し終わったところにちょうど打順がまわってきていて、治療中なら代打だして! と審判さんがせかすところに、もたついてごめんなさいと謝りながら試合にもどった。

最初の打席の最初のふたつのスイングはファウルチップで、相手チームの捕手も元気よくダイブして転んでやいのやいのといった。さっきまで水で濡らしてた手がすべるわとぼくは言い訳がましくいって太ももで手のひらを吹きながら追い込まれてからのボールを振ったら、ボテボテのゴロが三塁線に転がって、あわてて一塁まで猛ダッシュしたら内野安打になった。やったあといって外野まで余計にオーバーランした。そのあと二塁で封殺されて、ベンチに帰って絆創膏を貼ってもらった。それ以上はもう擦り傷はつくらなかった。

試合はあらかじめきいたとおりに乱打戦となって、外野の守りがたがいに固いのでフライが飛べばアウトとなるけど、ゴロが内野に転がればスルリと抜けていくか、強い打球をはじいて内野安打になるか、エラーで出塁となるのだった。バットの芯にあててレフトにおおきい当たりとおもったらナイスプレーでアウトにされて、バットの先でまずい当たりとおもったら内野の頭をふらりと越えてヒットになるのだった。

最終回までに八点くらい負けていて、こちらは表の攻撃で八点をぴったり追いついて、勝ち越すことはできないでスリーアウトになった。裏の守りは一点とられたらサヨナラ負けというところ、内野の守備が急に噛み合って無失点で抑えた。試合は同点の引き分けで、九人参加の五本先取のじゃんけんで勝ち負けを決めることになると、じゃんけんの強さは圧倒して一勝になった。

二試合目はそのまますぐにはじまって八番ライトにはいった。たいがいの打者はレフト方向に引っ張り打ちをするというわけで、ボールは飛んでこなかった。浅めに守って、内野ゴロのときにファーストの背後にカバーにはいる動きをずっとしていて、いちどだけそれがきいて進塁を防げたのがおもしろかった。この試合も乱打戦ながら、最後には三点差を追いついて、あと一点はいればサヨナラ勝ちというところで、勝ち越しきれないでまたじゃんけん勝負になった。こんどは圧倒されて一敗になった。知り合いのおかあさんがわざわざ応援にきてくれて、それだけでなくておにぎりとお弁当を差し入れていってくれた。

失点数がより少なければ一勝一敗でも優勝決定戦に進めるというときに、そこには食い込めなくて三位決定戦をもうひと試合することになった。最後の試合には五番セカンドにいれてもらった。三試合目にもなるともちろんみんな疲れていた。高齢のキャプテンと夜勤明けのKさんがとくに疲弊していて、うまいことカバーしながらまわした。

形式としての三位決定戦は第二試合とおなじ相手との再戦で、さっきの試合で投げていたコントロールの定まらないひととは別のひとが投げてますね、こんどの投手のほうがいいボール投げていそう、というとき、途中から駆けつけてくれたNさんがそれをみて「あのひと知ってるけどぜんぜん別地区のひとなのに投げてるの不正なんじゃねえかな」と見破っていた。その投手にフライをぽんぽこ打たされて、打つほうはたいしてたのしくもなく、試合は負けておわった。

はじめて二塁手をやるときに最初のうちはベースカバーができていなくていちど怒られたけど、それをおぼえてからはきれいなプレーがいくつもできてやたらたのしかった。レフト前に抜けた打球を二塁にまわしてもらって刺すというのができた。強めのセカンドゴロをしっかり処理して一塁にストライク送球もできた。猛烈にスピンしながらフワッとあがった小フライをつんのめりながら捕球してこぼさずにいられた。最終回の二死一塁でYさんがショートゴロの捕球姿勢にはいったときに「セカンド刺せます!」とアドリブで連携して二塁で封殺を取れたのがうれしかった。練習でしない日はなかったファンブルを本番ではしないで乗り切れたのがなによりほこらしかった。

おわったらみんなぐったりで、二試合目から駆けつけてくれたNさんは野球経験者だけにだれよりも細かく立ち回ってくれただけにおわったらもう魂が抜けたみたいになっていた。ほっともっとのお弁当をひとりひとつどうぞといって、唐揚げ弁当のおおきいやつをいただいた。一時間後に自治会の和室で打ち上げといってグラウンドからは解散して、シャワーをあびてお弁当を食べた。ヨガマットに寝転がって身体をのばした。

打ち上げは缶ビールからはじまって日本酒にワインとおのおのガブガブ飲んでいて、スーパーのお惣菜をたくさんひろげて食べ放題になっていた。監督のTさんと市役所のSさんがふたりしてものすごい勢いで一升瓶を乾かして景気がよかった。二時半からはじまって六時くらいまでリラックスして、もともと饒舌なひとは「あっひゃひゃ」と漫画みたいな酔っぱらいの笑いかたをして、もともと無口なひともたのしそうに声がおおきくなって、気持ちのいい無礼講だった。