なんの予定もない土曜日は、東松島のジャズ喫茶「アビーロード」になごみにいく。

先着していたお客さんふたりがそれぞれお帰りになったあと、マスターが「リクエストあったらどうぞ、ジャズでもジャズじゃなくても」と水を向けてくださる。じゃあフィル・ウッズいいですか、と口をついて出た。

二枚のアルバムをきかせてもらう。

ひとつめの Woodlore (1955) は、若いサックス奏者をシーンに受け入れさせたアルバムで、マスターは「歌心があるのがいいんだ」とおっしゃった。息づかいさえスイングしているのがよくきこえて模範として仰ぐのにうってつけとおもう。

続いて Musique du Bois (1974) はより前衛派のアプローチが対照的で、唖然とする。どういう構造にもとづいてどういう文法で演奏しているのかまったくついていけなく、かといって破綻とかカオスのほうへとは傾くそぶりもみせずに突っ走っていく。

どちらもはじめてきくアルバムで、マスターにはこう話す。なんでもストリーミングで聴き放題なのはうれしいんだけど、膨大なディスコグラフィが整理されていないからどこからきけばいいのかわからないんですよね。お店できかせてもらえるのがいちばんいいレファレンスになるし、勉強になりました。ありがとうございます!

そのあともふたりだけになったお店でマスターの気ままにきかせてもらう。フレディ・ハバードの Hub-Tones (1962) を「これはずっとお気に入りなんだ」とかけてくださる。チック・コリアとゲイリー・バートンの Crystal Silence (1973) を「これはぜんぜん違うタイプだけどいいんだよね」とかけてくださる。

帰り際の世間話で、十文字にある「ジョー・パス」というジャズ喫茶のことを、それから横手にある「テンポ」というジャズ喫茶のことをおしえてもらう。マスターが秋田県南のほうで仕事をなさっていたとき、これらのお店に通って勉強していたことをおしえてもらう。