秋祭りと航空祭にあわせて二泊三日で東松島をおとずれるプログラムがあって、もっぱら移住をかんがえている都市圏のひとを招く体裁になっている。
そのお客さんたちと一時間くらいおはなしして、それから飲み会にきてほしいんですがどうですか? とAさんに誘われて、無料のごはんならいくらでも、とよろこんでお手伝いをする。隣のCさんも「首都圏で暮らしたあと地元に帰ったひと」という枠でいっしょにきてくれる。
ホテルの会議室で車座になって、まずはご紹介といってビデオをながしたあと、ふたつの組にわかれて「なんでもきいてください」のセッションをする。といっても、場があたたまらないうちは「なんでも」といったところでききづらさもあるでしょうということで、こちらの話をする。
ぼくも移住ツアーではないけど海士町に招かれていったことがあるんですよ。移住しようと決意したきっかけがあるとしたらそれですね、とか、せっかく野球場があるのに市役所で事前予約しないと使えない。予約なしでキャッチボールしてるだけで怒られるのは腑に落ちない。子どもが遊んでいてもおなじことをいって叱るのか? そんなのは間違ってるからなんとかしてほしい。ところで、バッティングセンターは安いので助かる、などと話す。
だんだんに「電気代は高いですか」とか「人付きあいはたいへんですか」とか、気を遣ってきいてくれたのかはわからないけど、お客さんの側からもだんだん話してくれるのに答えているうちに、あっというまに一時間となっていた。
終わったあとにツアーの添乗員のお姉さんがやってきて、謝礼といって一万円をくれた。そうとは知らずにきたのでまったくご褒美のお駄賃だった。
ツアーバスに乗せてもらって駅前の凛まで移動して、いつものように入口をはいったら「きょうは二階でお願いします」といわれて、その存在も知らなかった二階は外階段をのぼった個室になっている。カウンターがあったりソファがあったり薄ピンクの壁紙があるのをみると、元はスナックだった部屋を居抜きしてうまくやっているのがよくわかる。
シーザーサラダ、お刺身、なすの揚げ浸し、煮穴子、唐揚げといただく。
滋賀の大学からきている若い男の子は原発事故に関心があって、福島で封じ込めの仕事をしたいという。現場の仕事をしたいという。理想的でない社会のありさまにいくらかの知識をもっている大人たちは、志があればこそ現場というよりも行政のしごとをしたほうがいいんじゃないか、など助言を親身にしているようだ。その若者がビール四杯、日本酒を四本、さらに緑茶ハイにも手を出しているのをみるにつけ、これだけ飲めたら福島でも絶対かわいがられるね。君の未来はあかるい! なんていっている。
こうして二時間くらい食事する。ツアーバスを見送る。見知った顔だけが残って、コースにはいっていたけど時間に間に合わずに残ってしまった味噌焼きおにぎりをいただく。
もう帰ろうというときに「知り合いがあそこで飲んでるから」といって引っ張られていくと、東京からきたという自称経営者が出てくる。自衛隊の花形パイロットをはべらせて悦に入っていたところらしい。問わず語りに「ぼくはね、奥松島をリゾートとして売りたいんですよ」と軽薄な夢を述べるのを聞かされる。そういうのが好きなひとだけあとに残して帰っていくとき、あのひとってそんな立派なひとなんすかときいたら、東京で駐車場貸しの会社やってるおじさんだよとおそわる。