月曜日は楽天イーグルスの最終戦でソフトバンクホークスと当たるのをみに仙台へ出かける。
九月の企画で前田健太投手のヘタウマなイラストいりシャツを配布する予定だった試合が順延になって、その特典のシャツも繰り越しになっている。この日は内野席とシャツ引換券が抱き合わせになって、それでいてそんなに高額でもないチケットがある。パートナーがそれをみつけて、盛岡で家族の看病をしつづけている息抜きに野球観戦にいきたいと誘ってくれるのに応じてふたりで出かけていく。
仙台駅で落ち合ってもうすぐ三時というころあい。おたがいまだお昼を食べていないとわかって、一番町の「さん竹」でおそばを食べる。だんだん暗くなってきた季節の午後の混んでいない時間にゆっくり食べるそばほど優雅なものはないわねといいながら、ぼくは揚げなすびを、彼女は舞茸天をたべる。すぐとなりの星山珈琲でキリマンジャロを飲む。
タクシーで球場に向かえば傘をさすほどでもない小雨が降ったり止んだりしている。応援グッズをながめてからシャツとチケットを引き換えて、さっそくふたりでお揃いに頭からそれをかぶって、おのおの軽食を手に入れてから座席で合流すると、引き換えるまでわからなかった座席の位置は前から六列目のいい席だった。ぼくはチーズステーキサンドイッチを、彼女はタコライスを食べながらみはじめる。楽天の先発はマエケン投手で、ソフトバンクは上茶谷投手だ。
一回表に二番打者の周東選手が出塁してさっそく盗塁でピンチとなるが、連続奪三振でしのいだ。その裏の攻撃は、こちらも二番打者の宗山選手がセンターに大飛球をはなって、周東選手がフェンスに衝突ながら捕球しそこねるうちに宗山選手はものすごい勢いで三塁に到達していた。上茶谷投手は制球がさだまらなくて、イーグルスは連続四死球で押し出しの一点を獲った。でも、その一点どまりだった。
二回裏にも満塁のチャンスがある。ラストバッターにはいったルーキーの阪上選手は、春にみにきたときにも先発していた。ビジョンに映った打率ははじめ一割を切っていたけど、ピッチャー強襲の内野安打で出塁するなりはじめの二倍近くまで良化している。連打と四球でふたたび満塁となるが、宗山選手がラインドライブの犠牲フライを打っただけで、この回も残塁が多かった。
中盤にかけて試合は0対2のまま停滞する。マエケン投手は毎回走者を出しながら奪三振で切り抜ける。上茶谷投手と、のちに徐(シュウ)投手は三者凡退のリレーをする。イーグルスが苦しんで無失点を守っているのにくらべて、ホークスは小気味よく押さえて、二点のリードはあってないようなものにみえた。
五回の守備はラストバッターの庄子選手が出塁するとたちまち盗塁を決められる。一番の正木選手が空振り三振をしたとき、振り逃げの処理で一塁を刺す隙をみて、庄子選手が二塁から三塁に駆け込んだ。どんな具体的な隙があったのかはわからない。みていなかった。みんなが見逃したその隙につけこんで、プロの技をみた。そのランナーを内野ゴロで返されて1対2となる。
いかにも嫌な流れで、この回は三者凡退とされたくない裏の攻撃は、中島選手が先頭で四球をとる。二打席とも活躍した宗山選手が空振り三振したときには嫌なムードがよぎったけれど、そのあとの辰己選手が左中間をやぶってすぐに一点を取り返した。序盤でチャンスをいまいち活かせなかったのにくらべて、なんか急に強いぞと客席はおおいに盛りあがった。
そこからはゼロの行進で、マエケン投手は終わってみれば六回を投げて十個の奪三振で国産車のような安心品質をみせた。阪上選手はもうひとつヒットを打って、本塁まで帰ってくることはできなかったとはいえルーキーイヤーを前向きに終わらせた。
代打で途中出場のホークス廣瀬選手は、慶応高校、慶応大学、ソフトバンクホークスという経歴で、就職先もエリート球団なのがすばらしい。
イーグルスは七回から西口投手、九谷投手、藤平投手とリレーして1対3で勝ちきった。藤平投手があらわれるときの出囃子と、球場通路のところからフィールドに駆け込んでくるところを背中からカメラが追いかけて映す演出は、めっちゃかっこよかった。三者凡退で30セーブ目となったし、登板前は2点とすこしだけだった防御率は3つのアウトによって1点台に良化した。見映えのいいシーズン成績が残るというわけで、よかったです。
試合が終わるとシーズン終了セレモニーといって、吉井監督が「こんばんは」とはじまるあいさつのスピーチをした。監督の指名で早川投手が即興のあいさつをして、前向きな態度でおはなししているのを聞けば、来年はきょうみたいな試合がもっとみたいね、とこちらもおのずと前向きにさせられている。
選手たちがグラウンドを一周します、とアナウンスがあったあと、ベンチでサインボールを製造する選手たちの姿がビジョンに映る。そのサインボールがぞくぞく投げ込まれるとき、六列目のいい席にいたものだから、通路をはさんですぐそこに放り込まれたのをナイスキャッチしてよろこんでいるひともみえる。そうはいってもなかなかこないものよねえ、とぼんやりみていたら、ふたつ右の席あたりに飛んできてこぼれたボールを、すぐ右隣にいたパートナーが拾いあげていた! 信じられないような格好でいちばんいい思い出がころがりこんでくる。
サインボールには62と書いてあって、それはきょうも七回に投げた西口投手のものだとわかる。パートナーは帰るときにもういちどストアに寄って、西口投手のタオルを一本、サインボールケースをひとつ、そのほか好みのグッズをあつめて手に入れる。なににせよファングッズを気に入ってあつめる姿はこれまであまりみなかったものだから、好きなものを選んでうれしそうにしているのを新鮮にかわいらしくおもう。あなたもこの一年でアメリカ野球から日本野球にずいぶん順応したねとすこし茶化しながらあおば通駅まで歩いて、ヘタウマなシャツをお揃いに着たまま最終電車で帰る。