喪中の家を片付けてるのに忙しくしていたパートナーが前の日から一泊やすみにきて、それならわたしも休みをあわせるからといって行楽の日にする。有給休暇をつかって鳴子峡へ紅葉狩りにいく。

前の晩は石巻で焼肉をごちそうする。帰り道にあたらしくできたトライアルで買い物をして、この日は朝からお弁当をつくって出かける。

ぐずついた天気が数日つづいたあとのひさしぶりの晴れの日と予報をみながら出かけるとき、家のちかくは天気雨がぱらついている。すこしいけば雨は止まるも、横風がしたたかに吹いて林を揺らしているのがみえる。

20世紀末のギャングスタラップのプレイリストをかけてもらいながら古川をわたる。岩出山にさしかかるとき、おばあちゃんの昔話をする。

古川市内でちいさな渋滞があったほかはスイスイと進んで、二時間弱かけて鳴子峡につく。今朝まで降っていた雨がまだ地面を濡らしている。真冬の風が吹いて、気温は6°Cと出ている。

空気の冷たさと足下の悪さに、遊歩道を散策してピクニックとしないでレストハウスのテラスに腰掛ける。お昼どきの観光客はご老人を主にしてにぎわって、みんながたべているきのこ汁をわれわれもいただきながら、お弁当をひろげる。

ささみ肉の半分をからあげに、もう半分をチーズ入りのカツにして、彩りにブロッコリーとミニトマトを詰めた弁当箱のことを、ひとあしさきに起きて料理してくれたパートナーは高校球児のためのボリューム弁当といった。立派なお弁当だ。ぼくに貢献できたことといえば、おにぎりを握ったのと、海苔をわけてラップに包んだだけ。

冷えてもおいしい味付けのお弁当と、種々のきのこと根菜のたっぷりはいった温かいきのこ汁を、おにぎり片手にもりもり食べる。テラスの向こうにはときおり突風が吹くのがみえて、おもわず転んでしまっているひともある。いまこの瞬間も色褪せていくようにさえみえる山と谷の景色はいかめしい。

レストハウスの裏手の広場を散策すれば、突風が骨にしみるほどだ。奥に突き出したちいさな展望台は陸羽東線がちょうどトンネルに吸い込まれていく線路をみせているけれども、山越えの路線は二年前の豪雨によって止まったままになっていて、紅葉をわけいる鉄道の姿はもうみることができないようだ。

谷を降りていく遊歩道を選んで食後の散歩をする。広場であれば冷たい突風はいかにも過酷であったけれども、谷に沿って降りていく道をいけば自然と風除けとなっている。今朝までの雨とあたらしい地下水で湿った落ち葉が道をおおっているのに気をつけながらゆっくり階段をくだる。

二十分もかからないで谷底につけば、小川のそばにせりだした舞台からゆく河の流れをみる。みあげれば紅葉の壁が両側にせりだしている。無のなかへとほどけて消えていくだけのちいさな命ひとつさえ、これはぼくの持ち物だと呼ばせない寂しさをおのずから幸福におもう。

散策のあとは鳴子温泉をのぞきにいく。湯めぐり駐車場という名前の無料スペースに停めさせてもらって町歩きをすれば、早稲田桟敷という温泉は九月から休館としてある。広場の手湯も、駅前の足湯も、すべからくおやすみとなっている。源泉のメンテナンスのため止めざるをえないようだ。

岩出山の道の駅によってお土産をみる。老舗のお菓子屋さんの洋菓子、岩手久慈のお店が監修したラーメン、母がここに寄ればかならず持ち帰ったキムチなどを手に入れる。別々に物色しているあいだに、パートナーは有精鶏卵のパックを抱えていて、青い玉子がおさまっているのをものめずらしくぼくはみる。ロイズのソフトクリームを食べるには寒さがすぎて、おやつと欲張らずに発つ。

古川駅につけばもう日は暮れて、ここから新幹線に乗るのを改札まで見送る。小一時間をタリーズでやすんで、キャラメルラテをごちそうしてもらう。ひとりになっての帰り道はまだ知らない道をいくうちにすこし遠回りとなりながらもう一時間ほどで家につく。