リース車の契約更新がこの夏にあった。料金ほか条件は変わらないまま、タイヤ空気圧の点検義務があたらしく表示されるようになっていた。
空気圧の点検不良によってタイヤをだめにした場合は自己負担で弁済していただきます、とある。どうも現実の損害が近ごろ起こって、責任の所在で揉めてしまったのに酸っぱい顔をしておっしゃっているふうだった。
半年おきのメンテナンスには欠かさず出しているけど、バイクであればもっと頻繁にみる空気圧のことをリース車のためにはたいして注意していなかったなとおもいながら、はいわかりましたと応答した。
ところで既定値はいくらなんでしたっけ、とたずねると、それなら車両に表示があるのであとでお見せしますね、といわれたまま、そのことはおたがい忘れて事務所を出てきてしまっていたのだった。夏の盛りのことで、事務所は汗のすえた臭いがして、できるだけ長居したくない気分のほうがぼくのほうでは打ち勝ってしまっていた。
前の日に鳴子へドライブしたとき、路面の歪みに足をとられる感覚があった。バイクに乗っておなじ感覚がすればたちまち空気圧を調べるところ、リース車のほうはそもそも適正値を習っていないのでおなじ器材で計測はできても正常か不良かよくわからない。
会社のミーティングのあとの余談に、自動車の適正空気圧ってどこに書いてあるか実は知らないんですよね、といったら、それなら運転席のドアの柱のところにステッカーあるとおもいますよとおそわって、散会のあとすぐにみたらたしかにそれはあった。いまの空気圧は規定より三割も落ちていることを知る。
日が暮れてからガソリンスタンドまで出かける。給油を済ませてから調整器を借りて、四本脚をそれぞれ正常にもどす。
右前の脚のバルブキャップが手からこぼれて、カラリンといってホイールのなかに消えていった。指をさしこむには狭すぎる隙間にはさまってしまったようにみえて、こんなことはメンテナの注意怠慢でなくてホイールの設計ミスでしょうとあわてるよりもむしろバカバカしさの諦めを得る。
どうせ落ちてこねえだろうけど、と半回転分だけ移動させていまいちど車両下をのぞきこんだらちいさなバルブキャップはどうやって出てきたのかそこに落ちていて、これなら悪くないともとどおりにかぶせる。